せっかく選んだ贈り物が、相手に思わぬ戸惑いを与えてしまった、そうした経験はないでしょうか。贈り物には、品物の見た目や価格だけでは判断しにくい「避けたほうがよい」とされるものが存在します。縁起や語呂合わせに由来するものが多く、現代ではあまり気にしない方もいますが、相手の年代や考え方によっては大切にされているケースも少なくありません。
この記事では、贈り物として避けたほうがよいとされる品物・花・数字を場面ごとに整理しています。「これを贈っても大丈夫だろうか」と迷ったときの確認としてお役立てください。
お祝い全般で避けたほうがよいとされる品物
慶事・お祝いの場面では、縁起や言葉の響きから贈り物として不向きとされる品があります。相手が特に気にしない場合でも、一般的な知識として覚えておくと選ぶ際の判断に役立ちます。
刃物(包丁・はさみ・ナイフなど)
「縁を切る」「関係を断ち切る」ことを連想させるとして、結婚祝いや長寿のお祝いなどでは避けるのが一般的です。特に結婚祝いの場合、縁起を重視するご家庭や年配の方が多い場では贈らないほうが無難です。
どうしても刃物を贈りたい場合は、相手から少額のお金を受け取る「買い取り」の形をとることで、縁切りの意味を避けるという慣習もあります。
櫛(くし)
「く(苦)」「し(死)」という語呂合わせから、縁起が悪いとされます。実用的な品ではありますが、お祝いの贈り物としては避けるのが基本です。
白いハンカチ
白無地のハンカチは、葬儀や別れの場面を連想させるとして、お祝いの贈り物には不向きとされます。ハンカチ自体はよく使われる贈り物ですが、お祝いの場ではカラーや柄の入ったものを選ぶほうが適切です。
履物・靴下・スリッパ
「相手を踏みつける」「下に見る」という意味合いに受け取られることがあるため、目上の方への贈り物では特に注意が必要です。同僚や友人へのカジュアルなプレゼントとして贈ることはありますが、改まった贈り物の場面では避けるのが無難です。
目上の方への現金のみの贈り物
現金そのものが失礼というわけではありませんが、特に目上の方に対して品物を添えず現金だけを贈ることは、「お金で済ませた」という印象を与えることがあります。ご祝儀や香典のように現金が一般的な場面は別として、個人的なお祝いでは品物と組み合わせるか、商品券・ギフトカードを選ぶほうが丁寧です。
場面ごとに避けたほうがよい品物
品物の意味は、贈る場面によっても変わります。同じ品でも、慶事には適していても見舞いには向かない、あるいはその逆になることがあります。以下に場面別の主な注意点をまとめました。
| 場面 | 避けたい品 | 理由 |
|---|---|---|
| 新築・開業祝い | ライター・キャンドル・灰皿など火に関係する品 | 火事を連想させるため避ける考え方があります。 |
| 新築・開業祝い | 鉢植え(土植えの植物) | 「根付く」が「寝付く」に通じるとして、特に病気見舞いでは避けられます。新築では問題ない場合もあります。 |
| 病気見舞い | 鉢植え・根のある植物 | 「根付く→寝付く(病気が長引く)」を連想させるため、見舞い品としては向きません。 |
| 病気見舞い | シクラメン | 「死・苦」を連想させる名前とされるため、見舞いやお祝いでは避けることがあります。 |
| 病気見舞い | 4本・9本の品(個数・本数) | 「死」「苦」を連想する数字のため、品物の数を4や9にしないよう配慮します。 |
| 慶事全般 | 菊 | 葬儀や仏事を連想させる花として知られており、お祝いの場には向きません。 |
| 慶事全般 | 椿 | 花が首から丸ごと落ちる様子が不吉とされ、縁起を気にする場面では避けられます。 |
| 慶事全般 | あじさい | 花びらが散りやすく「色あせる」印象に受け取られることがあり、場面によっては注意が必要です。 |
これらはあくまで「気にする方がいる」という知識として持っておくとよいもので、絶対的な禁止事項というわけではありません。相手の考え方や年代がわからない場合は、念のため避けておくのが無難です。
縁起の悪い数字と気をつけたい場面
贈り物の「数」も、縁起の観点から意識されることがあります。品物の個数、花束の本数、ご祝儀や現金の金額など、数字が関係する場面では以下の点を参考にしてください。
避けられる数字
4(し) 「死」を連想させるとして、最も広く避けられる数字です。品物の個数、部屋番号、金額(4万円など)でも気にされることがあります。
9(く) 「苦」を連想させます。お祝いの品や見舞いで9個・9本・9万円などは避けるのが一般的です。
49(しく) 「死苦」と読めることから、特に避けられます。ご祝儀や香典で4万9千円などは論外とされます。
10(とお) 偶数の中でも「割り切れる」ことが別れを象徴するとして避ける考え方があります。ただし10万円のご祝儀のように、金額としては問題ない場合も多くあります。
13 キリスト教文化圏では不吉な数字とされています。外国の方への贈り物では注意が必要な場合があります。
縁起がよいとされる数字
反対に、縁起がよいとされる数字も覚えておくと品物選びの参考になります。
3・5・7 奇数は慶事で使われることが多く、七五三にも代表されるように吉数とされています。
8 末広がりの形から縁起がよいとされ、金額や個数として好まれます。
2 偶数ですが「ペア」「夫婦」を表すものとして、結婚祝いなどで用いられることがあります。
6・12 半ダース・1ダースとしてひとまとまりに考えられるため、菓子類などでは自然な個数として受け取られます。
花束の本数や菓子の入数を選ぶ際は、意図せず不吉な数になっていないかを一度確認しておくと安心です。
ご祝儀・香典の金額にまつわるタブー
現金を贈る場合は、金額にも気を配ることが必要です。単に「縁起の悪い数字を避ける」だけでなく、相手との関係性や場面にふさわしい金額の範囲があります。
偶数・割り切れる金額を避ける(慶事)
結婚祝いなどの慶事では、偶数は「割り切れる=別れる」に通じるとして避ける考え方があります。2万円は例外的に「ペア」の意味から許容されることもありますが、4万円・6万円は特に避けられます。一般的には3万円・5万円・7万円・10万円といった金額が選ばれることが多いです。
新札・ピン札を用意する(慶事)
お祝いのご祝儀では、新札(ピン札)を用意するのがマナーとされています。「この日のために準備した」という気持ちを示す意味があります。反対に、香典では新札を使わないのが一般的です。あらかじめ準備していたことが「死を予期していた」という印象を与えるためです。
お札の向きと枚数にも注意する
ご祝儀袋にお札を入れる際は、人物が描かれた面を表にして、上向きになるように揃えるのが一般的な作法です。また、香典では逆向き(人物が下向き)にするという考え方もあります。複数枚のお札を入れるときは、すべて同じ向きに揃えるようにしましょう。
表書きや贈り方にまつわる注意点
品物そのものだけでなく、のし紙の表書きや渡し方にも気をつけたい点があります。細かいことのようですが、受け取る側が気にする部分でもあります。
「御霊前」と「御仏前」の使い分け
香典の表書きは、四十九日の法要前は「御霊前」、四十九日以降は「御仏前」を使うのが一般的です。宗教によって異なる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
慶事に弔事用の水引を使わない
水引の色は用途によって異なります。慶事には紅白・金銀、弔事には白黒・双銀が使われます。間違えると相手に失礼な印象を与えることがあります。
贈り物に値札をつけたまま渡さない
品物を渡す際は、値札や値段のわかるシールは必ず取り外します。価格を意識させることは贈り物のマナーとして適切ではありません。
お祝いの品を夜に渡すことを避ける
「夜=よ(世)が明ける」という語呂から、夜間に贈り物を渡すことを縁起が悪いとする考え方があります。特に目上の方や改まった場では、昼間に渡すほうが無難です。
タブーを知ることで、贈り物の選択肢が広がる
この記事でご紹介したタブーや縁起の考え方は、いずれも「絶対に守らなければならない厳格なルール」というよりは、相手への配慮として知っておきたい知識です。現代では気にしない方も多くいますが、大切な贈り物の場面では、知らなかったことで相手に不快な思いをさせてしまうリスクを減らすことができます。
「この品を選んで大丈夫だろうか」と迷ったとき、この記事を一度見返してみてください。タブーを意識したうえで選ぶことで、安心して贈ることができますし、受け取る相手への気遣いがより丁寧に伝わります。
贈り物は、品物そのものと同時に、それを選んだ気持ちと配慮が伝わるものです。タブーを「避けるべき制約」としてではなく、「相手を思いやる視点のひとつ」として活用していただければ幸いです。

