不動産投資では、どのエリアを選ぶかも非常に重要なポイントとなります。立地によって物件の収益性や将来性は大きく左右されるため、価格や利回りだけでなく、地域の背景や成長性まで幅広く見ておくことが大切です。
この記事では、投資に適したエリアを見極めるためのいくつかの視点をまとめてみました。
人口動態の確認
まず最初に確認したいのが、そのエリアの人口の動きです。人口が増加している地域は、それだけ住宅需要が高まっていると考えられるからです。逆に人口が減少傾向にある地域では、今後空室が増える可能性があるため、注意が必要です。
確認する際には、総務省統計局の国勢調査や自治体が発表している「将来人口推計」などが参考になります。
特に単身世帯や若年層の割合が高いエリアは、ワンルームマンションなどの需要が期待しやすいです。
たとえば東京都内では、23区のなかでも中央区や文京区などは人口増加傾向が続いており、若年層の転入も多く見られます。一方で、郊外の一部地域では高齢化と人口減少が進んでいるため、エリア選定には注意が必要です。
アクセス性・交通利便性
交通アクセスの良し悪しは、物件の競争力を大きく左右します。たとえば、最寄駅まで徒歩10分圏内であること、複数の路線が利用できるエリアであること、また都心まで30分以内でアクセスできるかどうかなどが判断基準となります。
都心への直通路線があるエリアは、たとえ都内中心部から離れていても利便性が高く評価されます。たとえば、神奈川県川崎市や千葉県市川市などは、都心通勤圏としての人気が高く、家賃水準も比較的安定しています。
再開発や大型施設の有無
その地域に再開発プロジェクトが進んでいるかどうかも確認すべきポイントです。たとえば、駅前の商業施設の建て替えやオフィスビルの新設、大型病院や大学の誘致といった動きがあると、地域に人の流れが生まれ、住宅需要が高まる傾向があります。
2020年代には、東京・品川エリアの高輪ゲートウェイ周辺の開発や、横浜市の関内・みなとみらい再整備計画などが進行しており、不動産投資家からも注目を集めています。
家賃相場と需給バランス
周辺の家賃相場を事前に把握しておくことも欠かせません。たとえば、SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイトでは、地域ごとの家賃の目安や募集物件数を調べることができます。
同じエリア内でも、築年数や間取りによって相場は大きく異なるため、複数の物件データを見て平均値を取ると良いです。入居希望者の多い価格帯と、自分が購入を検討している物件の条件が合致しているかを確認しておくと安心です。
空室率・競合状況の把握
エリアの空室率は、長期的な収益性に直結する指標です。空室率が高い地域では、入居者確保のために広告費やリフォーム費用がかさむ可能性があります。空室率は「住宅・土地統計調査」や「全国賃貸住宅新聞」などの専門メディアでも定期的に公表されています。
また、地域に建設予定の大型マンションやアパートがある場合、供給過多によって賃料が下がるリスクもあるため、事前にチェックが必要です。
生活環境と利便性
物件の周囲にスーパーやコンビニ、病院、学校、公園などがあるかどうかも、入居者が物件を選ぶうえでの重要な基準になります。また、女性の一人暮らしを想定するなら、夜道が明るいか、治安は良好かといった点にも注目したいところです。
こうした情報は、実際に現地を訪れて確認することが一番確実です。平日と週末、昼間と夜間で街の雰囲気が異なる場合もあるため、複数の時間帯で見ておくとより安心です。
地価や賃料の過去推移
将来的な値上がりや安定性を見るには、過去の地価や賃料の動向を確認するのが有効です。たとえば、国土交通省の「地価公示・地価調査」や、民間サイト「土地代データ」などで、町丁目ごとの価格変動を知ることができます。
過去5年で大きく上昇しているエリアは将来性を秘めていますが、すでに高騰しすぎていて利回りが低くなっている可能性もあります。利回りと成長性のバランスを冷静に見極めるのがよいと思います。
災害リスクと行政支援
地震や水害のリスクについても無視できません。ハザードマップや地震危険度マップを活用して、万が一に備えたエリア選びをすることが望ましいです。
地域によっては、空き家対策や移住促進の一環で、家賃補助や税制優遇がある場合もあります。こうした行政支援制度も活用できると、運用の安定につながることがあります。
現地調査で得られる情報
データ分析だけでなく、実際に現地に足を運ぶことでしかわからないことも多くあります。たとえば、駅からの道のりが坂道なのか、夜間は人通りがあるのか、近隣の住民の雰囲気など、Web上では確認できない情報も大切です。
さらに、物件周辺の雰囲気を掴むには、地元の不動産会社に話を聞くのも一つの手段です。地域の治安情報や、過去の入居者傾向など、生の声を聞くことで見えてくるものがあります。
エリアを比較する視点
複数の候補エリアがある場合は、以下のような視点で比較すると整理しやすくなります。
- 賃貸需要(単身者向けかファミリー向けか)
- 家賃相場と購入価格のバランス
- 再開発の予定や行政支援の有無
- 地価推移と利回りの目安
- 空室率や競合物件の多さ
こうした比較表を作って評価を「見える化」すると、感覚に頼らず冷静な判断がしやすくなると思います。
避けたいエリアの特徴
初心者の方が最初に投資する物件で避けた方がよいと思われるのは、次のようなエリアです。
- 空室率が高く、周囲に新築アパートが乱立しているエリア
- 夜の治安が悪く、近隣に風俗店や騒音施設が多いエリア
- 最寄り駅から15分以上かかり、バス便に依存している地域
- 地元住民からも人気が低く、賃貸募集に苦戦している場所
最初の投資で大きな失敗を避けるためにも、安定した賃貸需要が見込める、オーソドックスなエリアを選ぶことが安心につながると感じます。
まとめ
投資に適したエリアを見極めるには、単に利回りが良さそうという理由だけではなく、さまざまな角度から地域を分析していくことが大切です。人口動態や賃貸需要、周辺施設の充実度、開発計画、行政の支援制度など、複数の要素を重ね合わせて判断していくことで、長期的に安定した不動産運用につながります。
自分が「住みたい」と思えるかどうかという視点も、意外と重要な判断材料になります。データと実際に訪れた際の感覚の両方を大切にしながら、納得できるエリアをじっくり選んでいくのがよいと思います。