表面利回りと実質利回りの違い

不動産投資の情報を見ると、「利回り○%」という数字がよく出てきます。中でもよく使われるのが表面利回り実質利回りという二つの指標です。

名前が似ているため同じ意味だと思われることもありますが、計算に使う数字が異なり、投資の判断に与える印象も変わってきます。

ここでは、表面利回りと実質利回りの違い、計算方法、数字の読み取り方や注意点を整理していきます。不動産投資の収益性を検討するときの基礎として役立ちます。

表面利回りとは

表面利回りの定義

表面利回りは、年間の家賃収入を物件価格で割ったシンプルな指標です。広告やポータルサイトに掲載されている「利回り○%」は、多くの場合この表面利回りを指します。

一般的な計算式は次のようになります。

表面利回り(%) = 年間想定家賃収入 ÷ 物件価格 × 100

表面利回りの計算例

たとえば、以下のようなワンルームマンションを考えます。

  • 物件価格:1,500万円
  • 月額家賃:7万円
  • 年間家賃収入:7万円 × 12か月 = 84万円

このときの表面利回りは、

84万円 ÷ 1,500万円 × 100 ≒ 5.6%

となります。

家賃収入だけを見れば、年間で物件価格の約5.6%を回収できる水準という見方ができます。

表面利回りの特徴

表面利回りには次のような特徴があります。

  • 計算が簡単で、物件同士をざっくり比較しやすい
  • 経費や空室の影響を一切考慮していない
  • 広告上は高く見せやすく、実際より魅力的に感じる場合がある

最初の物件選びの段階で「候補を絞るための目安」として使う分には便利ですが、その数字だけで投資判断を行うとギャップが生じやすくなると感じています。

実質利回りとは

実質利回りの定義

実質利回りは、家賃収入から管理費や修繕費、固定資産税などの経費を差し引き、より現実に近い収益性を示そうとする指標です。

表面利回りが「売上ベース」だとすれば、実質利回りは「手取りベース」に近いイメージです。一般的な計算式は次のようになります。

実質利回り(%) = (年間家賃収入 − 年間経費) ÷ 物件価格 × 100

実質利回りで考える経費の例

実質利回りを計算するときに考慮される主な経費には、次のようなものがあります。

  • 管理費・修繕積立金(区分所有マンションの場合)
  • 共用部の電気代・清掃費(管理委託の場合)
  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険・地震保険の保険料
  • 管理会社への管理委託料・家賃送金手数料
  • 賃貸募集時の広告料や仲介手数料(年平均に按分)

どこまで経費として含めるかは人によって考えが分かれますが、投資判断に影響が大きいものはなるべく織り込んでおくのがよいと思います。

実質利回りの計算例

先ほどのワンルームマンションで、次のような年間経費がかかるとします。

  • 管理費・修繕積立金:年間18万円
  • 固定資産税・都市計画税:年間7万円
  • 管理委託手数料:年間家賃収入の5%(84万円 × 5% = 4.2万円)

合計の年間経費は、

18万円 + 7万円 + 4.2万円 = 29.2万円

となります。
このときの実質利回りは、

(84万円 − 29.2万円) ÷ 1,500万円 × 100 ≒ 3.6%

という計算になります。
表面利回りは約5.6%でしたが、実質利回りでは約3.6%まで下がる計算です。
数字の印象がかなり変わることが分かると思います。

表面利回りと実質利回りの違い

計算に含める要素の違い

二つの利回りの大きな違いは、計算に経費を含めるかどうかです。

  • 表面利回り:家賃収入だけを見ている(経費を考慮しない)
  • 実質利回り:家賃収入から経費を差し引いている

そのため、同じ物件であれば、実質利回りは必ず表面利回りより低い数字になります。

見える景色の違い

表面利回りは魅力的に見えることが多く、物件探しの段階では目を引きやすい指標です。
一方で、実際に投資を行うときに大切なのは、最終的に手元に残るキャッシュです。
この点で、実質利回りのほうが実際の収益性に近い判断材料になりやすいと思います。

どちらが重要か

どちらか一方だけを見ればよいというものではなく、段階によって使い分けるイメージが近いと感じます。

  • 物件を大まかに比較するとき:表面利回りでスクリーニング
  • 購入を真剣に検討するとき:実質利回りで精査

投資判断に踏み込む段階では、表面利回りだけでなく、必ず実質利回りも確認しておくのが安心だと思います。

利回りを見るときの注意点

空室リスクと賃料下落

表面利回りも実質利回りも、多くの場合「満室」「想定賃料」を前提としています。
実際には、入退去のたびに空室期間が発生し、周辺相場の変化によって賃料が下がる可能性もあります。

より現実に近づけたい場合、年間家賃収入に対して数%〜一桁台後半程度の空室率を見込んでおき、実質利回りを試算しておくとリスクを把握しやすくなります。

一時的な費用の扱い

入居付けのための広告料や原状回復費は、発生のタイミングが不規則です。
これらをどの程度年平均に慣らして実質利回りの計算に含めるかで、数字の印象が変わってきます。

慎重に見たい場合は、少し多めに見積もった年間経費を設定して、利回りに余裕を持たせておくほうが安全ではないかと思います。

ローン返済は別の視点で見る

利回りはあくまで「物件そのものの収益性」を示す指標であり、ローン返済額は式に含めないのが一般的です。

実際のキャッシュフローを確認する際には、

  • 実質利回りで物件の収益性を把握する
  • ローン返済や税金を含めた資金計画を別途シミュレーションする

という二段構えで考えておくと、整理しやすくなると思います。

おわりに

表面利回りと実質利回りは、どちらも不動産投資の収益性を考えるうえで欠かせない指標です。表面利回りは物件を広く比較するための入り口として、実質利回りは投資判断に踏み込む際の指標として、それぞれ役割が分かれています。

物件情報を見るときに、「この利回りは表面なのか実質なのか」「どのような前提で計算されているのか」といった点を意識しておくと、数字の意味が見えやすくなります。

最終的には、自分なりの経費や空室率の前提を置いたうえで実質利回りを試算し、無理のない範囲で投資判断をしていくのがよいと思います。

タイトルとURLをコピーしました