ROI(投資利益率)を使った物件比較

不動産投資で複数の物件を比較するときは、家賃収入や利回りだけでは判断が難しい場面があると思います。ROI(Return on Investment)は、投資額に対してどれだけ利益を得られたかを示す指標で、投下した自己資金の回収力を見るときに役立ちます。物件価格や諸費用の違いも加味して評価できるため、初期費用の大小によって収益性が見えにくくなる場面でも比較しやすい方法です。

ROIの基本的な計算方法

ROIは次の式で求められます。

ROI = 年間利益 ÷ 投資額

年間利益は、家賃収入から管理費、修繕積立金、固定資産税などの支出を差し引いた「手取りの年間キャッシュフロー」を指します。投資額は、自己資金を基準にする場合と、物件購入にかかった総費用を基準にする場合がありますが、自己資金を基準にする方法が比較しやすいと感じます。

自己資金ベースのROIが役立つ理由

ローンを利用すると、同じ物件でも投下する自己資金の額は人によって異なります。単純な利回りでは見えにくい部分を補うため、自己資金ベースのROIは実際の投資負担に対する利益を確認できるメリットがあります。たとえば、物件価格が高くても初期費用が少なく済む物件はROIが高くなることがあり、キャッシュフロー中心で判断する投資家に向いています。

ROIを使った物件比較の具体例

実際にROIで比較すると、同じ表面利回りの物件でも印象が変わる場合があります。次のような例を考えてみます。

A物件

  • 自己資金:3,000,000円
  • 年間キャッシュフロー:300,000円
  • ROI:300,000 ÷ 3,000,000 = 10%

B物件

  • 自己資金:5,000,000円
  • 年間キャッシュフロー:350,000円
  • ROI:350,000 ÷ 5,000,000 = 7%

年間キャッシュフローの金額だけを見るとB物件のほうが多く見えますが、自己資金に対する回収力をみるとA物件のほうが効率が良い結果になります。同じ利回りで並んでいる物件でも、このように自己資金の差によって順位が逆転することがあるため、比較判断にROIを加えると見落としていた価値に気づくことがあります。

ROIを活用するときに意識したいポイント

ROIは便利な指標ですが、物件選定においてすべてを置き換えられるものではありません。年間キャッシュフローが一時的に変動することや、修繕費が想定より大きくなる可能性など、不動産特有の要素も合わせて考える必要があります。また、自己資金を増減させてROIを調整する方法もありますが、リスク許容度とのバランスを考えて判断したほうが現実的です。

ROIと他の指標を組み合わせる方法

ROIは投資額に対する利益効率を確認できますが、将来の売却まで含めた収益性を見るにはIRRやNPVを組み合わせると補完しやすくなります。短期の収益性をみる指標としてはROIがわかりやすく、物件同士の初期費用差を比較したいときに役立ちます。複数の指標を使うことで、想定外の出費やキャッシュフローの変化にも柔軟に対応できる判断材料になると思います。

ROIで比較するときの注意点

ROIが高い物件は一見魅力的に見えますが、空室リスクや立地の競争力など別の要素が弱い場合もあります。また、初期費用が極端に低く抑えられている物件は、購入後の修繕負担が大きくなることがあり、結果としてROIが低下する可能性があります。短期だけでなく中長期の収益性も想定しながら、複数の角度で判断する方法が現実に合っていると思います。

ROIを活用した物件比較のまとめ方

ROIは、投下した資金に対してどれだけ利益を得られたかを比較できるため、複数物件を並べたときの判断材料として使いやすい指標です。特に、初期費用の違いによって見えにくくなる収益効率を整理できる点が強みだと思います。最終的にはキャッシュフロー、売却益、立地条件を合わせて比較し、総合的に判断する方法が現実的かと思います。

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