親から子へ土地や建物を譲る、夫婦間で自宅の持分を移す、住宅購入資金を援助してもらうなど、不動産に関係する贈与では複数の税金が関わります。中心になるのは贈与税ですが、不動産を取得する側には不動産取得税や登録免許税も発生します。さらに、取得後は固定資産税や都市計画税も毎年の負担になります。
不動産の贈与は、現金の贈与よりも税額を見誤る原因が多い取引です。売買価格がないため、税金ごとに使う評価額を確認する必要があります。贈与税では相続税評価額、不動産取得税では固定資産税評価額、登録免許税でも固定資産税評価額を使うことが多く、同じ不動産でも税目によって見方が変わります。
贈与による不動産取得で関係する主な税金
不動産を贈与で取得した場合、主に次の税金を確認します。
| 税金 | 課税される場面 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| 贈与税 | 個人から不動産や住宅取得資金をもらったとき | 暦年課税、相続時精算課税、非課税特例の有無 |
| 不動産取得税 | 贈与により土地や建物を取得したとき | 固定資産税評価額、住宅用軽減の有無 |
| 登録免許税 | 贈与による所有権移転登記をするとき | 固定資産税評価額、登記原因、税率 |
| 固定資産税・都市計画税 | 取得後に所有者として課税される | 翌年度以降の年間負担 |
このように、贈与税だけを見て判断すると、取得後の費用を見落としてしまう可能性があります。特に土地や建物そのものを贈与する場合は、登記費用と不動産取得税まで含めて資金を用意しておく必要があります。
贈与税の基本
贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です。法人から財産をもらった場合は贈与税ではなく所得税の問題になるため、誰から財産を受け取るのかも確認が必要です。
贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税があります。暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残額に税率をかけて計算します。1年間の贈与額が110万円以下であれば、暦年課税では贈与税はかかりません。
ただし、暦年課税による贈与は、贈与者が亡くなったときの相続税計算で持ち戻しの対象になる場合があります。令和6年1月1日以後の贈与については、相続開始前の加算期間が従来の3年から7年へ段階的に延長されています。不動産の生前贈与を相続対策として考える場合は、贈与時の税額だけでなく、将来の相続税計算への影響も確認する必要があります。
不動産の贈与では評価額が大きくなるため、暦年課税の基礎控除110万円だけでは税負担を抑えきれない場合があります。土地や建物をそのまま贈与する場合は、事前に評価額を確認したうえで税額を試算する必要があります。
不動産の贈与税評価
贈与税では、もらった不動産を相続税評価額により評価します。土地は原則として路線価方式または倍率方式で評価します。路線価がある地域では、路線価に面積や補正率を反映して評価します。路線価がない地域では、固定資産税評価額に倍率をかける倍率方式を使います。
家屋は、固定資産税評価額に1.0を乗じて評価するため、基本的には固定資産税評価額と同じ金額になります。マンションの場合は、土地部分である敷地利用権と、建物部分である区分所有権を分けて評価します。
評価額は、贈与税額だけでなく、家族間での公平感にも関わります。複数の相続人がいる家庭で一部の人だけが生前贈与を受ける場合は、将来の相続時の扱いも含めて確認しておくことが大切です。
相続時精算課税を選ぶ場合
相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子や孫などへ財産を贈与する場合に選択できる制度です。贈与者ごとに選択し、いったん選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税へ戻れません。
相続時精算課税では、令和6年1月1日以後の贈与について、暦年課税の基礎控除とは別に、相続時精算課税に係る年間110万円の基礎控除が設けられています。そのうえで、特別控除額2,500万円までの部分は贈与時の税負担を抑えられます。特別控除を超えた部分には、一律20%の贈与税がかかります。
この年間110万円の控除は、相続時精算課税を選択した特定贈与者からの贈与について使う枠です。暦年課税の基礎控除110万円と自由に併用できるものではなく、贈与者ごとの課税方式に応じて扱いが分かれます。
また、相続時精算課税は贈与時に税金を終わらせる制度ではありません。贈与者が亡くなったときには、相続時精算課税で受けた財産を相続財産に加算して相続税を計算します。ただし、令和6年1月1日以後の贈与については、相続時精算課税に係る年間110万円の基礎控除額を控除した残額が相続財産に加算されます。不動産の価額が将来上がるか下がるか、相続税の課税が見込まれるかによって、選択の意味が変わります。
住宅取得等資金の贈与を受ける場合
親や祖父母など直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受ける場合、一定の要件を満たすと贈与税の非課税特例を使えることがあります。令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に受けた住宅取得等資金の贈与については、省エネ等住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円まで非課税となります。
この制度は、不動産そのものの贈与ではなく、住宅の新築、取得、増改築等の対価に充てるための金銭の贈与が対象です。適用を受けるには、贈与者と受贈者の関係、受贈者の所得、住宅の床面積、住宅の性能、取得時期、居住開始時期など、複数の要件があります。
また、贈与税が非課税枠内に収まる場合でも、特例を使うには贈与税の申告書と必要書類の提出が必要です。資金を受け取った時期、住宅代金に充てた時期、入居時期が要件から外れると、特例を使えない場合があります。資金を受け取る前に、要件と申告の流れを確認しておく必要があります。
夫婦間で居住用不動産を贈与する場合
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与する場合、贈与税の配偶者控除を使えることがあります。この制度では、基礎控除110万円とは別に、最高2,000万円まで控除できます。
適用を受けるには、婚姻期間が20年を過ぎた後の贈与であること、贈与された財産が居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること、贈与を受けた年の翌年3月15日までに実際に住み、その後も住む見込みであることなどが必要です。
配偶者控除は同じ配偶者からの贈与について一生に一度しか使えません。また、控除を受ける場合は贈与税の申告が必要です。夫婦間だから税金がかからないと考えるのではなく、要件と申告手続を確認する必要があります。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を取得したときにかかる都道府県税です。売買だけでなく、贈与による取得も課税対象になります。一方、相続による取得は一般的には不動産取得税の課税対象になりません。
不動産取得税は、固定資産税評価額をもとに計算されます。住宅や宅地には軽減措置があるため、実際の税額は土地の種類、建物の用途、床面積、取得時期によって変わります。親から土地や建物を無償でもらった場合でも、不動産取得税が発生する点は見落としやすいところです。
住宅を贈与で取得する場合は、床面積要件や住宅用土地の軽減措置を確認します。軽減を受けるには申告や必要書類の提出が求められることがあるため、物件所在地の都道府県税事務所で手続を確認しておきたいところです。
登録免許税
不動産の名義を贈与により変更する場合、所有権移転登記が必要になります。この登記の際に登録免許税がかかります。贈与による所有権移転登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の2.0%です。
相続による所有権移転登記の登録免許税は0.4%であるため、贈与と相続では登記時の税負担が大きく異なります。たとえば固定資産税評価額2,000万円の土地を贈与で移転する場合、登録免許税は40万円です。同じ土地を相続で移転する場合は8万円です。
贈与は、生前に名義を変えられる点では分かりやすい方法ですが、登録免許税だけを見ても相続より負担が重くなります。贈与税、不動産取得税とあわせて総額で判断する必要があります。
贈与と相続の税負担の違い
不動産を家族に移す方法として、贈与と相続のどちらかを選ぶかですが、生前に名義を移せる点では贈与にメリットがありますが、税金面では相続より負担が重くなるケースが多くあります。
| 項目 | 贈与 | 相続 |
|---|---|---|
| 財産移転の時期 | 生前に移せる | 死亡後に移る |
| 中心となる税金 | 贈与税 | 相続税 |
| 不動産取得税 | 原則として課税対象 | 一般的には課税対象外 |
| 登録免許税 | 原則2.0% | 原則0.4% |
| 注意点 | 税負担が重くなる場合がある | 遺産分割や相続人間の調整が必要 |
贈与は、相続対策、共有解消、住宅取得支援、夫婦間の財産移転などの目的で使われることがあります。ただし、税金だけを考えると有利とは限りません。なぜ生前に移す必要があるのか、贈与後の管理や売却予定はあるのかまで含めて判断する必要があります。
負担付贈与に注意する
住宅ローン付きの不動産を贈与する、借入金を引き受ける代わりに不動産をもらうといったケースは、負担付贈与として扱われることがあります。負担付贈与では、通常の贈与とは評価の考え方が変わります。
負担付贈与や個人間の対価を伴う取引により土地や家屋を取得した場合、贈与税の計算では通常の取引価額に相当する金額によって評価します。単純に相続税評価額で見ればよいとは限らないため、ローンや債務が残っている不動産を贈与する場合は、税理士に確認したほうが安全です。
贈与前の確認項目
不動産を贈与する前には、次の項目を確認しておくと、税金や手続の見落としを減らせます。
- 贈与するのは不動産そのものか、住宅取得資金か
- 土地と建物の評価額はいくらか
- 暦年課税と相続時精算課税のどちらで考えるか
- 住宅取得等資金の非課税特例を使えるか
- 夫婦間の配偶者控除を使えるか
- 不動産取得税がいくらになるか
- 登録免許税がいくらになるか
- 贈与後の固定資産税を誰が負担するか
- ローンや抵当権が残っていないか
- 贈与税の申告期限と必要書類
贈与税の申告期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。相続時精算課税を選択する場合や、住宅取得等資金の非課税特例、配偶者控除を使う場合は、申告書や届出書、添付書類の提出が必要です。
贈与は税金の総額で判断する
贈与による不動産取得では、贈与税、不動産取得税、登録免許税、取得後の固定資産税まで確認する必要があります。贈与税の特例だけを見て判断すると、登記時や取得後の負担を見落とします。
住宅取得等資金の贈与のように、制度を正しく使えば税負担を抑えられるケースもあります。一方、不動産そのものを贈与する場合は、評価額が大きく、登録免許税や不動産取得税もかかるため、相続より負担が重くなることがあります。
不動産の贈与を検討するときは、贈与する目的、評価額、申告手続、将来の相続税、取得後の維持費まで含めて考えることが大切です。家族間の話し合いだけで進めず、税理士、司法書士、不動産会社に確認しながら、税金と手続の全体像を見て判断するのがよいと思います。