不動産の売買や賃貸の仲介は、多額の金銭が動く取引になることが少なくありません。物件の権利関係や契約内容を十分に理解しないまま進めてしまうと、後から大きなトラブルに発展する可能性があります。そのため、不動産取引を業として行う場合には、一定の基準を満たした事業者だけが営業できるよう、法律で免許制度が設けられています。これが「宅地建物取引業者免許制度」です。
宅地建物取引業とは何を指すのか
宅地建物取引業とは、以下の行為を業として反復継続して行うことを指します。
- 土地や建物の売買
- 土地や建物の交換
- 売買・交換・賃貸の代理または媒介
個人が自分の家を一度売却するだけであれば、宅建業には該当しません。しかし、他人の不動産を仲介して報酬を得る場合や、継続的に物件を売買する場合は、免許が必要になります。
免許を与えるのは誰か
宅建業者の免許は、営業範囲によって申請先が異なります。
一つの都道府県のみで営業する場合
事務所が一つの都道府県内にのみ存在する場合は、その都道府県知事が免許権者となります。地域密着型の不動産会社の多くは、この知事免許に該当します。
複数の都道府県で営業する場合
事務所が二つ以上の都道府県にまたがる場合は、国土交通大臣の免許が必要です。全国展開している不動産会社や、大手仲介会社がこの区分に該当します。
免許番号の見方と更新の仕組み
宅建業者の免許は、永続的なものではありません。有効期間は5年間と定められており、継続して営業するためには更新手続きが必要です。
免許番号の意味
免許番号は次のような形式で表示されます。
- 東京都知事(3)第12345号
- 国土交通大臣(2)第6789号
カッコ内の数字は更新回数を表しており、数字が大きいほど長期間営業していることがわかります。ただし、数字が大きいから必ずしも良い業者とは限らない点には注意が必要だと思います。
免許を受けるための主な要件
宅建業者免許を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
欠格事由に該当しないこと
過去に重大な法令違反があった場合や、破産手続き中で復権していない場合などは、免許を受けることができません。この仕組みは、悪質な業者を排除するための重要なポイントだと思います。
事務所の設置
営業実態のある事務所を構える必要があります。自宅兼事務所の場合でも、専用スペースや看板の設置など、一定の要件が求められます。
専任の宅地建物取引士の設置
事務所ごとに、一定数の「専任の宅地建物取引士」を配置しなければなりません。原則として、従業員5人に1人以上の割合で設置する必要があります。
免許業者に課される義務
免許を受けた後も、宅建業者にはさまざまな義務が課されます。
標識の掲示
事務所や取引場所には、免許番号や所属団体を記載した標識を掲示する義務があります。消費者が業者の身元を確認できるようにするための仕組みです。
帳簿の備付け
取引内容を記載した帳簿を作成し、一定期間保存しなければなりません。万が一トラブルが発生した場合の確認資料として重要な役割を果たします。
保証制度への加入
宅建業者は、営業保証金を供託するか、保証協会に加入する必要があります。取引相手が損害を被った場合の救済制度として機能しています。
免許の有無はどこで確認できるか
宅建業者が正規の免許を持っているかどうかは、国土交通省の「宅地建物取引業者検索システム」や、各都道府県の公開情報で確認できます。契約前に一度確認しておくと、安心感につながると思います。
宅建業者免許制度を理解する意義
宅建業者免許制度は、不動産取引における最低限の信頼性を担保する仕組みです。免許があること自体はスタートラインに過ぎませんが、無免許営業を避けるための重要な判断材料になります。不動産会社を選ぶ際には、免許の種類や更新回数、あわせて担当者の説明姿勢なども確認しておくのがよいと思います。
