海外に贈り物をする場面では、相手の国や文化に合ったマナーを知っておくことも必要になります。喜ばれると思って選んだものが、実はタブーに触れていたということもあるためです。
このページでは、欧米・アジアを中心とした各国のギフト文化について、宗教や歴史的背景にも触れながら紹介していきます。
欧米のギフトマナー
アメリカ
文化的背景
アメリカは移民国家であり、宗教・民族・価値観が多様な社会です。そのため、「ギフト=相手に合わせる」という文化が根付いています。
贈るシーン
- 誕生日、クリスマス、結婚・出産祝い
- 引越しパーティー(Housewarming)
- 感謝祭(Thanksgiving)では食べ物の持ち寄りも多いです
贈り物の特徴
- 個人の趣味やライフスタイルを重視
DIYキット、アウトドア用品、ペット関連グッズなど、相手の「好きなこと」を中心に選ぶ傾向があります。 - ギフトカード文化が定着
特定の店舗やAmazonなどで使えるギフトカードは、手軽で喜ばれやすい一方で、親しい間柄ではやや味気ないと感じる人もいます。
注意点
- お酒は相手の宗教や年齢に注意
- 手作りの品は喜ばれることも多いが、衛生観念の違いに配慮が必要な場面もあります
イギリス
文化的背景
階級意識や礼儀を重んじる文化が今なお残っており、贈り物にも「節度」が求められます。
贈るシーン
- ホームパーティーや訪問時の手土産
- バースデーギフトや結婚祝い
- イースターやクリスマスには家族でプレゼント交換
贈り物の特徴
- 日常使いの上質な品が好まれる(紅茶、焼き菓子、ハンドクリームなど)
- おしゃれなパッケージやカードも重視されます
注意点
- 菊の花は葬儀用なので避ける
- 個人的すぎる贈り物(香水、服など)はやや慎重に
- ビジネスの場では高額な贈り物は避け、書籍や筆記具、手紙などが選ばれます
フランス
文化的背景
芸術と美意識の国フランスでは、ギフトにも「センス」と「控えめな品格」が求められる傾向があります。
贈るシーン
- 招待されたディナーや誕生日
- クリスマスは家族間で贈り物を交換するのが一般的
贈り物の特徴
- チョコレート、マカロン、ワインなどの高級食品が定番
- 贈る相手の職業や知性に合う書籍なども選ばれることがあります
注意点
- 花を贈る際は色・本数に注意(13本は不吉とされる)
- 白い花や菊は避ける
- 「自己主張の強すぎる贈り物」は控えめにするのが礼儀とされています
アジアのギフトマナー
中国
文化的背景
儒教・道教・風水などが深く根づいており、贈り物にも「意味」や「象徴」が強く意識されます。贈答の文化が非常に発達している一方、近年は公的機関などでの贈答に規制が設けられるようになっています。
贈るシーン
- 春節(旧正月)、中秋節、誕生日、婚約・結婚、出産
- 企業間では契約成立時や出張の際に贈り物を持参することもあります
贈り物の特徴
- お茶、高級フルーツ、健康食品などが定番
- 金色や赤のパッケージが好まれる
タブー
- 時計:「終わり」を連想し、弔事を意味するためNG
- 傘・靴・はさみ:「別れ」や「切る」という象徴
- 白や黒の包装紙は弔事を連想させるため避ける
贈り方のマナー
- 一度断ってから受け取るのが礼儀
- 目上の人には両手で渡す
- 開封は相手の前で行わないのが一般的
韓国
文化的背景
儒教の影響が色濃く残る韓国では、年長者や目上の人への敬意を表すための贈り物が重要視されています。家庭と地域のつながりが強く、贈り物にも「関係性」が色濃く反映されます。
贈るシーン
- ソルラル(旧正月)とチュソク(秋夕)では家族や親戚への贈り物が習慣
- 就職、昇進、合格祝いなど、ライフイベントでも贈り合う機会が多いです
贈り物の特徴
- 健康食品(高麗人参・栄養ドリンク)
- 生活用品のセット(海苔・スパム・洗剤など)
- フルーツの詰め合わせ(大玉リンゴや梨)
見た目の美しさが重視され、包装も豪華に整えられています
注意点
- 贈る相手との立場・年齢差によって品の「格」が問われることも
- 官公庁や教育関係者への高額な贈答は禁止されているため注意が必要
インド
文化的背景
多宗教・多言語社会のインドでは、宗教ごとにギフトの内容やタブーが大きく異なります。ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、キリスト教徒が混在しており、それぞれの慣習に合わせる必要があります。
贈るシーン
- ディワリ(光の祭典)などの宗教行事
- 結婚式、出産、入学祝いなど
- ビジネスシーンでは帰任時や訪問時にギフトを渡すこともあります
贈り物の特徴
- お菓子(スイーツ)、香料、布製品
- 色鮮やかで装飾性のある雑貨が好まれる
- 現金の贈り物も一般的で、「501ルピー」など縁起のよい数字で包むのが慣例
注意点
- 牛革製品や牛肉はヒンドゥー教徒にNG
- 豚肉やアルコールはイスラム教徒にNG
宗教的背景に応じて慎重に選ぶことが求められます
まとめに代えて
ギフト文化は、その国の宗教・歴史・家族観・人間関係の築き方までを反映している深いテーマでもあります。日本と同じように見えても、背景に異なる価値観が存在しています。
一方で、共通して大切にされているのは「相手のことを思って選ぶ姿勢」と「礼を尽くす気持ち」かと思います。
贈り物は形だけでなく、贈り方・言葉・包装までを含めたコミュニケーションですので、海外の方とのやり取りにおいても、その国の流儀を尊重する姿勢が、信頼や親しみを深めるきっかけになるかと思います。